糖尿病とは? What is diabetes?
血糖(血液中のブドウ糖)は、体にとって非常に重要なエネルギー源です。
特に脳や神経はブドウ糖をほぼ唯一の燃料として使っているため、血糖は生命維持に欠かせません。糖尿病は、血中の血糖が慢性的に多くなっている病気です。高血糖の状態が長く続くと血管や神経が傷つき、全身の臓器に悪影響をもたらします。
増えている糖尿病 Features
日本では成人の約6人に1人が糖尿病または予備群とされ、年々増加しています。糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病
1型糖尿病
自己免疫の異常で膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンを分泌できなくなるタイプ。
2型糖尿病
2型糖尿病
日本人の9割以上がこのタイプで、遺伝的要因に加えて食べ過ぎ・運動不足・肥満などの生活習慣が深く関係します。
2型糖尿病の方がほとんどですが、特に2型糖尿病は遺伝的要因が大きいとされています。親や兄弟姉妹に糖尿病の方がいる場合、発症リスクは2〜3倍に高まります。ただし、これはあくまで「糖尿病になりやすい体質」という意味であり、それだけで必ず発症するわけではありません。
生活習慣が整っていれば、糖尿病を発症しない人も多くいます。一方で、遺伝的素因がなくても、食生活の乱れや運動不足、肥満など不適切な生活習慣が続くと糖尿病になることがあります。
特に家族歴がある方は、体重管理・食事・運動習慣を意識することが予防の鍵になります。
自覚症状が少ない糖尿病、
放置するとどうなる?
What if I leave it alone?
糖尿病の怖いところは、初期にはほとんど自覚症状がないことです。
「喉が渇く」「尿の回数が増える」といった症状は、血糖値がかなり高くなってから現れることが多く、多くの方は気づかないうちに病気が進行し、血管や臓器にダメージを与え続けます。
糖尿病は「血糖値の病気」ではなく、「血管の病気」です。
血管の内側は、本来血液の流れを滑らかに保ち、血栓を防ぐバリアの役割を果たしています。しかし、高血糖の状態が長く続くと、血液中のブドウ糖が血管壁に付着し、タンパク質と結びついて「糖化産物(AGEs)」が作られます。AGEsによって血管の内皮細胞が傷つくと、その修復過程でコレステロールが沈着し、「プラーク」と呼ばれる塊ができます。プラークが増えると血管は硬くなり、内腔が狭くなることで動脈硬化が進行します。
動脈硬化が進んだ血管は非常にもろく、プラークが破れると血管が固まりやすくなり、血栓を形成し血管を詰まらせます。
心筋梗塞・脳梗塞のリスクは、糖尿病があると2~4倍に高まります。
- 心臓の血管で詰まれば心筋梗塞:胸の痛みや突然死の原因となることがあります。
- 脳の血管で詰まれば脳梗塞:半身麻痺や言語障害など、重い後遺症を残すことがあります。
さらに、細かい血管でも障害は進行し、網膜症、腎症、神経障害といった合併症が表れます。
- 糖尿病網膜症:失明の原因
- 糖尿病腎症:人工透析の原因
- 糖尿病神経障害:足のしびれ・潰瘍・壊疽
糖尿病は症状が出る前に早期に発見し、適切に管理することが何よりも重要です。
糖尿病の診断、治療目標 Diagnosis and treatment goals
合併症を予防するため、糖尿病の管理において重要なことはは血糖を適切に保つことです。その指標として使われるのがHbA1c(ヘモグロビンエーワンシーと読みます)があります。HbA1cは過去2か月間の平均血糖値を反映する指標で、5.8%以下が正常とされています。検査前の食事の影響をほとんど受けないため、日常の血糖コントロールの全体像を反映し、合併症予防の目安になります。
当院では糖尿病と診断された方は、年齢、基礎疾患、生活習慣などを考慮しながら、それぞれの方の適したHbA1cの目標値を設定します。そのうえで、食事療法や運動療法を基本に据え、必要に応じて薬物療法を組み合わせて治療を行います。
コントロール目標値
- ※1 適切な食事療法、運動療法でコントロール可能で、薬物療法でも低血糖の起こりにくい場合の目標値。
- ※2 糖尿病による合併症を起こさないようにするための目標値。
対応する血糖値としては空腹時血糖値が130mg/dl未満、食後2時間後血糖値が180mg/dl未満を目安とする。 - ※3 高齢者や認知症で食事摂取のむらもあり、低血糖を起こしやすい治療強化の困難な患者様の目標値。
治療の基本は
生活習慣の改善
Improvement method
01.食事療法
糖尿病治療の中心は食事です。適正体重を算出し、そこから自分に見合った1日の目標摂取カロリーを確認しましょう。
適正体重=
身長(m)× 身長(m)×22
身長170cm、体重75kgのAさんの場合
適正体重=身長(m)× 身長(m)×22 = 64kg
適正体重が64kgに対し、実際の体重は75kgであり太っているということになります。
適正体重より太っている方は
1日の目標摂取カロリー(kcal) =
適正体重(kg)×25
Aさんの場合、1日の目標摂取カロリー=64(kg)× 25 = 1,600cal です。
細かな計算が面倒な場合は、食品の中でも高カロリーな白い炭水化物(白米、食パン(白パン)、うどん、白砂糖、小麦粉製品など)を控えるようにしてください。
02.運動療法
さらに、スクワットや腕立て伏せなどの軽い筋トレを取り入れると、筋肉量が増え、糖の取り込みが促進されます。筋トレは週2〜3回を目安に、無理のない範囲で行いましょう。
運動の注意点
- 運動前後には必ずストレッチを行い、ケガを防ぎましょう。
- 運動中はこまめに水分補給を行い、脱水予防に努めましょう。
03.薬物療法
糖尿病治療薬には、インスリンの効きを改善するもの、血糖を尿から排泄させるもの、食後の血糖上昇を抑えるもの、さらには体重減少を助ける薬までさまざまです。毎年のように新薬が登場していますが、当院では効果と安全性を十分考慮し、適正な薬剤を選択することを心掛けております。